PROJECT STORY

ウェア表面に触れることなく着脱できる無菌室用ディスポウェア

製薬会社における最先端の現場向けに開発された、フード・マスク一体型ディスポウェア「BioClean-D Drop-down マスク付」。これは、裾や袖が床に触れないばかりか、ウェアの外側も触れることなく着用できる新しい無菌室用ウェアである。日本ではまだスタンダードにはなっていないが、将来的に必要不可欠となる製品として期待されている。

製薬・理化学・研究所用機器・資材

感動品質

お客様の課題を解決する営業で信頼を得る 
人生100年時代において、誰もが元気で健康的な日々を送るために、新薬の開発が急務となっている。ラボ・ファーマチーム(以下、「LABチーム」)では、製薬会社を中心に、再生医療や化粧品などの、開発から製造の各工程で求められている商材を取り扱い、さらに時代の一歩先を見据えたビジネスに取り組んでいる。 

LABチームが誕生したのは1998年のことだ。当時、製薬業界は各社技術の漏洩防止の観点から非常に保守的であり、その反面、製薬会社自身が新たな情報を得る機会も少なかった。そこでLABチームは、粘り強く製薬業界においてユーザーの開拓を目指し、また同時に「ライフサイエンス業界」に特化することで、業界に沿った新たな情報の提供とその機会を作ることができた。製造現場の担当者と直接面会し、状況を確認することによって、今まで隠れていたユーザーニーズを把握し、その現場に応じた製品開発や提案を行えるようになった。 

また、各企業によってニーズが異なり、ビジネスの観点からすると市場は決して大きくない。そこでLABチームは、他社では簡単に対応できなかったこの市場の開拓を目指し、高品質且つ小ロット生産可能な製造者を国内外問わず探し回った。加えてユーザーの管理作業軽減のため、国内の業界に先駆けて、ロットごとの抜取り検査報告書、滅菌報告書などの提供を実施した。 

机上での理想を語るのではなく、現場を訪ねて直接声を聞き、欧米を中心とした新たな製品とのクロスポイントを見つけ出すことは、貿易商社である原田産業の現場を知るLABチームだからこそ実現できたことである。現在LABチームの取扱品は、除染剤・滅菌グローブ・ディスポウェアに加え、繰り返し使用できるオートクレーブ対応ウェアなど、多岐にわたる。無菌エリアのオペレーター用製品のトータルサプライヤーといえるほど、取扱う商品の幅は広い。 


今までにない画期的な無菌室用ディスポウェア 
私たちが生活する一般空間には、花粉や菌、ほこり、カビ、毛髪やフケなどさまざまな微粒子が無数に漂っており、人体にも同様に、菌やホコリなどが無数に付着している。そのため、無菌エリア入室時には、専用のウェアを着用することで人体の菌やホコリを封じ込め、さらに微粒子の持ち込みを防ぐのである。ただし、着用時にも菌やホコリの付着は許されず、服の表面に触れずに着用する必要がある。 

このような着用の難しさを容易にしたのが、「Drop-down」方式だ。この方式を取り入れた「BioClean-D Drop-down マスク付」を2018年から取扱っている。この製品は取出しから着用完了までウェアの表面に触れることがない。 

また、使い捨てであることも特徴の一つだ。従来、無菌室用ウェアは専門の業者にクリーニングを出して、繰り返し使用していた。付着物によるクロスコンタミネーションリスクや、洗浄回数などの管理なども必要であった。このような課題を解決することにもつながったのである。

元々この製品は、製薬業界だけでなく再生医療など先端医療の現場での需要があると睨み、2017年頃にいち早く日本市場に紹介したもの。その当時、多くの顧客に提案を行ったが、コスト面で折り合いがつかず、日本市場参入には至らなかった。しかし、年々厳しくなる無菌管理のもと、無菌室用ウェア表面の付着菌を問題視する企業が増加し、近年になって徐々に需要が高まっている。製品が時代に合致してきたことを実感している。 




日本人にとって便利なものを開発する
表面に触れずに着用できる「BioClean-D Drop-down」は、画期的なデザインであるゆえ、慣れないユーザーにとっては着用に抵抗があった。欧米人向けのデザインが日本人の体格にマッチしない点も、その一つである。導入には日本仕様に改良する必要があった。 

フード部分にマスクを加えマスク一体型とし、あらゆる日本人の体形にマッチするよう、日本仕様の検討に入ったのが2017年のことである。 ウェア着用後、ゴーグルを装着した際に、皮膚の露出がないように目元部分のデザイン変更。さらには、着座の際に背中~首、後頭部の生地のツッパリによる額部分の露出の改善。欧米人との股下寸法の体格差による着衣のしにくさを解消するため、専用ホックの増設など、チーム内で検討を繰り返し、海外メーカーと直接交渉を重ねた。しかし、メーカー側は、日本特別仕様による手間やコストの増加などを理由に、現在の日本の限られた市場向けに開発の腰は重かった。

何度も交渉を重ねたが、最終的には現地に赴き、日本仕様が必要な理由と今後の市場拡大を説明し、メーカーを説得。やっと開発がスタートした。その後、幾度にもわたるサンプル作成、細部の変更を繰り返し、日本市場向け「BioClean-D Drop-down マスク付」が完成した。 


将来を見据えたビジネス展開 
高品質を誇る「BioClean-D Drop-down マスク付」だが、採用を決断するユーザーは、まだ少ない。機能が優れていても、簡単にリプレースが進むわけではない。しかし、欧米の状況を分析すると、いずれ波がやってくると確信している。実際、サンプルと共に第三者機関による試験結果を持って製薬会社を訪れると、担当者からの評価は高い。 

また、製薬会社のコンタミネーション対策は、年々厳しいものへと変化している。それは、設備投資と平行に、ソフト面でも進んでいる。そのため、LABチームでは、新たな製品の紹介や開発はもちろんであるが、単にセールスだけでなく、コンタミネーション対策のコンサルタント業にも取り組み始めている。先進的な取り組みを行っている海外企業と合同でコンサルタントを行うことで、最新の情報や対応方法を提供。ユーザーの課題を一手に引き受けて解決するのが狙いだ。

画期的な新薬が誕生する裏で、原田産業の「BioClean-D Drop-down マスク付」が活躍する未来が、すぐそこまで来ている。