PROJECT STORY

使い捨てにしない脱環境負荷型商品として生まれた「レジャー施設向けレインポンチョ」

ウォーターアトラクションは楽しみたい。でも、濡れたくないという消費者のニーズに応えるべく誕生したのが「レジャー施設向けレインポンチョ」だ。レジャー施設では使い捨ての簡易ポンチョが多いなか、地球環境にも配慮した高付加価値のポンチョが人気となっている。

安全保護機器・資材

共創・共育

お客様の安全を守り、快適性を提供する
原田産業の特徴に、新規事業への飽くなき挑戦というものがある。そのひとつが「レジャー施設向けレインポンチョ」ビジネスだ。
セーフティープロテクションチーム(以下、「SFチーム」)は、「Be safe Be comfortable(安全と快適性)」をコンセプトとした製品の開発を行っている。「安全」が必要とされる現場に対して、防護服やゴム手袋など、頭の先から足の先までをケアし、かつ「快適」に使えて確かな効果を発揮する製品を企業に提供するのがミッションだ。
「安全」が必要とされる現場とは、重工業系の製鉄所や自動車工場、石油化学工場など、危険を伴う環境を意味する。SFチームに課せられた使命は、危険と隣り合わせの現場で働く人々の安全を第一に考えて守ることだといえる。
しかし、SFチームではそのような特殊な装備品ばかりを扱っているわけではない。遊園地にある、ウォータースライダーや急流すべりのような水を使った乗り物で、大量に水がかかることからお客様を「守る」ためのポンチョも展開している。



ブーツ用シューズカバー 3日以内に3,000足!?
SFチームでは、従来、ポリエチレン製のシューズカバーも取り扱っていたが、主力の手袋や防護服とは違い、数千足単位が短期で販売されるような売れ筋の商品ではなかった。
2016年、SFチームに1本の電話がかかってきた。今まで取引のない代理店だった。相手は「ブーツ用のシューズカバーがあれば年間で3万足オーダーしたい。まず先に3000足を、3日以内に納品して欲しい」と焦りながら話した。納期の短さもさることながら、どこで年間3万足も使うのかとSFチームのメンバーは驚いた。
詳しく聞いてみると、レジャー施設のアトラクションで使用するもので、ポンチョはあるが靴元が濡れないよう保護するものがないため、ロングタイプのシューズカバーが必要とのこと。「3日以内に3000足」という要望は、通常なら無理な話だが、原田産業は在庫をやりくりすることで対応することができた。追加の2万足もサプライヤーと交渉すれば2か月で確保できる。商品の確保の他、新規取引のために必要な社内外手続きも異例の速さで進め、要望通り3日以内に納品した。すると先方から「大量なのにも関わらず、短期間で用意してくれた。これほど早いところは今までなかった」と感謝の言葉をいただくことができた。

完全防水に近いポンチョが好評
シューズカバーの納品をきっかけに、レジャー施設へのヒアリングを開始。「ウォーターアトラクションを楽しむお客様の中には、水に濡れることを喜ぶ人もいるが、濡れたくない人もいる。特にインバウンドのお客様は、ウォーターアトラクションも楽しみたいが、遊園地以外での観光も楽しみたい。だから濡れるのは困るという人がとても多い」という現場の声を入手できた。これをきっかけにレジャー施設へのレインポンチョビジネスに乗り出した。ポンチョを供給していた遊園地の紹介もあり、他の遊園地にもビジネスを拡大した。また、水族館などにも展開を進めていた最中、新たな課題も見つかる。ヒアリング先の水族館では、「今、使い捨てが問題になっている。プラスチックやゴミで海が汚染されている昨今、海で生活する動物のショーを行っている施設として、海洋環境問題を無視できない状況にある」と暗い顔を見せた。そこで、使い捨てではなく持って帰ってもらえるような高品質なポンチョに変更する、つまりリユースによるエコへの貢献を提案したところ、担当の顔は明るくなった。
早速、ベトナムのサプライヤーとコンタクトを取り、環境負荷の少ない素材で、リュックを背負ったままでもすっぽり着用できるゆったりサイズのポンチョを開発することとなった。
こうして完成した「レジャー向けレインポンチョ」。ユニークなのは、ポンチョを入れるトートーバックを大きめにし、観客席に座っているときはトートバッグに足を入れ、足元も防水できるようにしたことだ。大きなものを入れることができ、足元が水で濡れるのも防げる優れものと話題になった。



お客様と二人三脚で作り上げたポンチョ
しかし、最初からレインポンチョビジネスが上手く行ったわけではない。
原田産業としてこれまで作ったことのない製品であったこと、サプライヤーにとっては要求レベルの高い日本向け製品への取り組みは初めてであったことから、一部の色落ちや異物混入、納期遅れとトラブルが続いた。
もう大丈夫と思ったらまたトラブル。トラブルが起こる度、一時期は毎週のようにSFチームのスタッフがベトナムを訪問。不具合の原因を突き止めるため、毎回朝から晩まで現場に張り付いた。気づいたことは、現地サプライヤースタッフは決していいかげんな作業しているわけではなく、限界まで働いているということ。そこで、細かな点から改善点を見つけようと、SFチームのスタッフも現場に入り共に作業を行った。やってみて初めて難しさを実感することも多々あった。現場に入っての作業の後は、色落ちの改善方法や生産効率を上げる製品のたたみ方を、現地担当者と検討に検討を重ねた。
もちろん、お客様であるレジャー施設にも何度も足を運び、謝罪と解決のための策を提案。繰り返される不具合に行き詰まることばかりだったが、「とにかく出来る限りをやろう」と逃げずに向き合い続けた。
度重なる不具合と納期遅れは、通常なら取引停止となってもおかしくない。しかし、先方の担当者は、「もう一度、チャレンジしましょう」と笑顔を見せてくれた。具体的な解決策を一緒に考えてくれたり、異物混入が発覚した際は、夜遅くまで一緒に検品作業を行ってくれたりした。お客様も出来る限り力を尽くしてくれたのだ。
その後品質は改善するも、サプライヤー1社のみではどうしても生産が追いつかず、他に新たな協力工場を探すこととなる。しかし、再びゼロからのスタートとはならなかった。課題を抱える現場をとことん観察し、共に作業を行い、改善してきた経験があったからだ。短期間で新たな協力工場の生産体制を整え、レジャー施設の担当者も納得する製品を、安定して生産できる体制を築き上げた。
「レジャー施設向けレインポンチョ」はレジャー施設にも、そこを利用するお客様にも好評で安定稼働している。
今後は、野球やサッカーのような、雨でも試合があり、観戦の際ポンチョがあると便利なスポーツに向けてオフィシャルレインポンチョとして展開できるのではないかと考えている。
また、有名デザイナーやアパレルメーカーとのコラボレーションも面白い。様々な可能性を模索することも検討している。
お客様と二人三脚で築き上げたレジャー施設向けポンチョ。このポンチョがスポーツ観戦にも欠かせないアイテムとなる日は、そう遠くないのかもしれない。